岡山県立岡山操山高等学校

岡山操山中学校 通信制課程
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始業式 式辞

2017年04月12日

平成29年度一学期始業式 校長あいさつ
H29.4.10(月)

 

 皆さん、こんにちは。

 新しい一年、平成29年度が始まりました。先ほどの岡山操山中学校の入学式では120名の新しい仲間を迎え、次いで、岡山操山高等学校の入学式では280名の新しい仲間が加わりました。皆さんには、新しくできた先輩や後輩、同じクラスとなった仲間やお世話になるたくさんの先生方との出会いを大切にして、今日から、学習や学校行事、そして部活動等に、思う存分に力を発揮することを期待しています。

 さて、今日は1つだけお話をします。
 昨年度の終わり、3学期終業式・修了式の式辞で、皆さんは、なぜ、何のために勉強しているのか、というお話をしました。この春休み、皆さんが頑張るためのエンジンとなる「学ぶ目的」と、その実現に向けた筋道について、「言葉」にして改めて整理できましたか。
 私自身は、「学ぶ目的」は「世のため人のために尽くすこと」だと思っています。
ここに1冊の本を持ってきました。司馬遼太郎の『21世紀に生きる君たちへ』という本です。この中に、江戸時代末期の医師・緒方洪庵の生涯を描いた「洪庵のたいまつ」という小説が掲載されています。これは、小学校の教科書等にも載っていたので、知っている人もいるかと思います。書き出しにこうあります。

 「世のために尽くした人の一生ほど、美しいものはない。」
緒方洪庵は、足守藩(現在の岡山市北区足守)の藩士の子として生まれ、生まれつき病弱でありながら、大阪、江戸、長崎で医学・蘭学を修めた後、大阪に戻り、医師として人々のために尽くしながら適塾という学校を開いて、大村益次郎や福沢諭吉などその後の日本の近代化を担った多くの若者を育てました。適塾は大阪大学医学部の源流の一つとされています。
 司馬はこうも書いています。「彼の偉大さは、自分の火を弟子たちの一人一人に移し続けたことである。弟子たちのたいまつの火は、後にそれぞれの分野であかあかとかがやいた。やがてはその火の群れが日本の近代を照らす大きな明かりになったのである。」
 また、洪庵は、自分自身と弟子たちへのいましめとして、12か条の教訓を書いています。その第1条はこういう内容です。
 「医者がこの世で生活しているのは、人のためであって自分のためではない。決して有名になろうと思うな。また利益を追おうとするな。ただただ自分を捨てよ。そして人を救うことだけを考えよ。」
  緒方洪庵はなぜ世のために尽くすために学び続け、その火を多くの弟子に移し続けたのでしょうか。私は、「自分だけが幸せな社会など存在しない」と洪庵が思っていたからではないかと考えています。
 自分が心豊かに幸せに生きていくためには、社会全体が平和で秩序が保たれていることが必要です。ということは、自分の幸福な人生を追求する行為は、社会全体の豊かさや安定に寄与するものでなければならない。

 皆さんが将来就く「仕事」も、「相手」がいなければ、そもそも仕事として成り立ちません。洪庵のような「医者」に限らず、どんな業種や職業も、必ず誰かのため、世の中のためになっています。多くの仕事があって、初めて世の中は成り立っています。他者のため、社会のために働くこと、貢献することが、実は自分の幸せにつながっているのです。
 皆さんが中学校、高校で一生懸命に勉強し、その成果を自分自身のキャリアアップに生かすことは当然のことです。でも、皆さんの努力は社会の中で生かされ、今よりももっと素晴らしい社会づくりにつながっていく。それが、皆さん一人一人の幸せとなって返ってくるのです。よりよい未来を目指し、そのような個と全体の関係、個人と社会、世界の間の目に見えない関係を「可視化」すること、言葉や数式等を使って見えるようにすることが「学問」であり、学ぶことの本質、つまり学ぶ意味=「志」だと私は思っています。
 未来をよりよいものにすること。それは決して一人ではできません。みんなで力を合わせて、郷土岡山の、日本の、そして人類全体の「未来への航路」を作っていく。そんな未来を担う人材を育てていくこと。それが、本校がスーパーグローバルハイスクールに取り組む意味であり、「未来航路プロジェクト」が目指すものだと、私は思っています。

 皆さんが将来、大学を卒業し、大人として自立したとき、皆さんの志、司馬の言う「たいまつの火」を、次の時代を担う若い人たちに移してください。私は歴史とは「志のリレー」だと思っています。
 高校3年生の皆さんは、本校を卒業していった多くの先輩たちの「志」を受け継ぎ、自分の進路実現に向け、この1年間、限られた時間をしっかりと自分でマネジメントしながら、勉強や部活等に全力でチャレンジしてください。そして何より、学ぶこと自体を、学ぶことによってより素敵な人間へと成長していく自分自身を、楽しんでください。
 高校1・2年生、中学生の皆さんは、日々の学習や松柏祭などの学校行事、部活動などを通して、自分の「志」、学ぶことの意味をしっかりと自分の中に確立してください。
 校長として、日々一生懸命努力を続ける操山中・高の生徒の皆さんを、そしてその教育に日夜尽力している教職員を誇りに思っています。
 1年間、共に頑張りましょう。