岡山県立岡山操山高等学校

岡山操山中学校 通信制課程
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平成30年度 第70回卒業式 校長式辞

2019年03月06日

式辞

梅の花が風に舞い、早春の息吹が感じられる今日のよき日、岡山県教育庁財務課長 森下慎様、岡山県議会文教委員会委員長 小林孝一郎様、岡山操山高等学校同窓会長 大原利憲様、岡山操山中学校・高等学校PTA会長 池田博昭様をはじめ、多数の御来賓並びに保護者の皆様の御臨席を賜り、岡山県立岡山操山高等学校第七十回卒業式を、かくも厳粛に挙行できますことは誠に大きな喜びであり、感謝に堪えないところです。本校教職員、在校生と共に、厚く御礼申し上げます。

卒業生の皆さん、御卒業おめでとうございます。心からお祝いを申し上げます。
皆さんは、長い人生の中でもとりわけ貴重な青春の三年間を本校で過ごされました。そして、本校の歴史と伝統を体現する校庭の大樹に見守られ、学業や学校行事、部活動等にいそしみながら心と体を鍛えてこられました。本校で皆さんが続けてきた努力と培ってきた友情は、皆さんのこれからの人生の中でかけがえのない財産となるでしょう。卒業された後も、皆さんは「操山ファミリー」の一員であり、本校は、いつまでも皆さんの「心のふるさと」です。人は変われど、山青くそして水清きこの地に建つ母校は、皆さんのこれからの人生を見守っています。

さて、平成も終わりを迎えようとしている今、グローバル化やAIなど科学技術の一層の進展、少子高齢化等により、我々は社会、経済、環境など様々な分野において前例のない変化に直面しています。生活水準や機会の格差に伴う国内外の対立や社会の分断、内戦等に伴う大量の難民の発生、地球温暖化など気候変動や生態系の変化、天然資源の枯渇など、不安定で、不確実で、複雑な世界が広がり、数年先さえ予測することは困難となっています。
このような時代を生きていく皆さんに、私は次の二つのことを期待しています。
一つめは、本校に脈々と受け継がれている「和して流れず」、そして「松柏」の精神を胸に、志を高く掲げ、これからも学び続けてほしいということです。
皆さんは、日々の授業や未来航路、SOZAN国際塾等において、将来のグローバル・リーダーとして必要な「幅広く深い教養」「課題解決能力」「リーダーシップ」「コミュニケーション能力」そして「社会貢献の意識」を身に付けてきました。併せて、郷土岡山や日本、そして世界を、未来に向けてよりよいものとするために、「正解のない問い」に果敢に挑むチャレンジ精神と、主体的に社会の形成に参画し、その発展に寄与する基礎的な力や態度を養ってきました。
将来の日本や世界は、「未来からの留学生」ともいえる皆さん一人一人の成長にかかっています。「社会のために、弱き人のために何ができるか」ということを問い続けることにより、初めて自らの学びの成果が生かせます。大学などの上級学校に進んでも、他者と協働しながら具体的に課題を解決していていく力や、自ら考え、主体的に行動し、責任をもって社会変革を実現するための専門的な知識や技能を身に付けるよう、学び続けてください。
二つめは、皆さん自身の言葉を磨き、自らの世界を広げてほしいということです。
青年期は誰しも、孤独な一人だけの時間をくぐり抜け、何者かになるとともに、様々な学びや出会いを通して、人間として「より普遍的な価値」を希求し、自分の在り方や生き方を顧みながら、社会の中での自己を確立していく大切な時期です。
社会とは、他者との協力なしには生存できない人間が、共同で生活を営む場であり、そこに秩序が成り立つためには、「共生の理念」が必要です。全体主義と戦い続けたユダヤ人の政治哲学者ハンナ・アーレントには、「世界は他者と共に作るもの」という一貫した姿勢がありました。青年期にある皆さんは、この世界を「共生の大地」とするため、偏見にとらわれることなく、常に自らを高め、他者に届く言葉を磨いてください。そして、素敵なネットワークを世界に広げ、自由で公平な社会の実現を目指して努力を続けてください。

最後のエールとして、私が最近感銘を受けた、ある大学の掲示板にあった言葉を贈ります。
「世界が間違いを犯そうとするとき、君はそれを止める力を持てるか。君はそれを止める言葉を持てるか。
世界が愛を見失いそうになっているとき、君はそれに光をあてることができるか。君はその光に仲間をあつめることができるか。
世界を動かそうとするとき、君はまず目の前にいるひとりを動かさなければならない。つまりそれは、ひとりの心を動かすことができたなら、世界を動かすことができるということだ。
君の言葉は、国境を越えて、人種を越えて、時を越えて、文化を越えて、それを必要とする人に届くか。
世界に届く言葉を持て。その言葉に責任を持て。」
世の中をよくすることは、「幅広く深い教養」とそれに裏付けられた「言葉」の持ち主にしかできません。岡山操山は、そういう人間を育てる場所でした。
これからの世界をつくるのは皆さん自身です。大学でも、そして社会に出ても、大いに学び、自分の世界を広げ、温かい心を持った素敵な大人になってください。
保護者の皆様、お子様の御卒業、誠におめでとうございます。
今日まで、保護者の皆様にはお子様のことで楽しいこと、嬉しいことがたくさんおありであったと思います。同時に、お子様のことで心を砕かれ、あるいは思い悩まれることも多々おありではなかったかと拝察します。しかし、皆様の豊かで細やかな愛情により、お子様はそれぞれ素直で、何事にも真摯に取り組むことのできる人間として成長されました。改めて、保護者の皆様に心からの敬意を表したいと思います。
また、今日に至るまで本校教育に対しまして温かい御支援と御理解をいただきましたことに、教職員を代表し、心から感謝申し上げます。本当にありがとうございました。
結びに、御臨席を賜りました御来賓の皆様、保護者の皆様に、さらなる卒業生たちの成長を温かく見守っていただきますようお願い申し上げまして、式辞といたします。

                                  平成三十一年三月二日
岡山県立岡山操山高等学校
校長 近藤 治