岡山県立岡山操山高等学校

岡山操山中学校 通信制課程
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令和元年度第71回卒業式 学校長式辞

2020年03月04日

令和2年3月2日(月)

式  辞

 梅の花が風に舞い、早春の息吹が感じられる今日のよき日、保護者の皆様方の御臨席を賜り、岡山県立岡山操山高等学校第七十一回卒業式を、かくも厳粛に挙行できますことは誠に大きな喜びであり、感謝に堪えないところです。本校教職員、在校生と共に、厚く御礼申し上げます。
 卒業生の皆さん、御卒業おめでとうございます。心からお祝いを申し上げます。
皆さんは、長い人生の中でもとりわけ貴重な青春の三年間を本校で過ごされました。そして、本校の歴史と伝統を表す校庭の大樹に見守られ、学業や学校行事、部活動等にいそしみながら心と体を鍛えてこられました。本校で皆さんが続けてきた努力と培ってきた友情は、皆さんのこれからの人生の中でかけがえのない財産となるでしょう。卒業された後も、皆さんは「操山ファミリー」の一員であり、本校は、いつまでも皆さんの「心のふるさと」です。集まり散じて人は変われど、水清きこの地に建つ母校は、皆さんのこれからの人生を見守っています。
 さて、新しい「令和」の時代にあっても、経済のグローバル化やデジタルサイエンスの進展はとどまることなく、人、物、情報が高速かつ大量に世界を駆け巡っています。
 また、水や食料の問題、地球温暖化や異常気象、貧困や格差の拡大、さらに、新たな感染症の発生など、私たちの身の回りには地球的視野で解決すべき未曾有の問題が山積しています。
 これらの理由としては、国際社会が有効な解決策を提示できないことに加え、解決に向けた「正解」が存在しないこと、あるいは一つとは限らないことが挙げられます。かつてないほど世界の距離が短くなり、価値観の多様化が進む中、地球上にどうやって安全・安心で「共に生きる社会」を構築するかが、現在、問われています。

 そのような中、「未来への航路」に旅立とうとする皆さんに、私は次の二つのことを期待しています。
 一つめは、引き続き「志」を高く掲げ、国内外の人々の幸せのために貢献する努力を続けてほしいということです。
 学びは、自分の興味を満たすためだけのものでも、他者よりも優れていることを誇示するためにするものでもありません。私たちは自分で得た知識や技能を、「人間を幸福にする」ために学ぶのです。
 近い将来、皆さんがそれぞれ専門とする学問領域は、一つの大学や日本国内だけでは完結せず、世界のいろいろな研究成果や知見を集めて、地球規模の課題に共同で立ち向かうようになるでしょう。その意味でも、皆さんの新しいステージでの学びは、個別的なものではなく、これからの社会や歴史を変え、人類社会のために貢献していくものにつながっています。より高度な知識や技能を身に付けるとともに、幅広く現実の世界の有り様を理解し、課題解決に向けて主体的に学び続け、新たな価値を生み出す努力を続けてください。
 二つめは、これからも「人格」を磨き続けてほしいということです。
 本校には、脈々と受け継がれている「和して流れず」、そして「松柏」の精神があります。それらは、相手を尊重する姿勢を常に持ちながらも、周囲に流されることなく、自分の信念を貫き通す強い志と覚悟を表しています。
 習得した知識や技術を社会で生かすためには、世界への貢献意識や他者の痛みへの想像力、社会の形成者としての自覚が必要です。自由や寛容の精神を高く掲げ、世界に貢献することを目標にできる「人格」が増えることが、私たちの未来を、単なる「勝ち負け」の世界から解き放ち、小さな星である地球を人類が共存できる真に豊かな社会に変えてくれます。自分の利益を顧みず、貫ける正義を持つ人になってください。
 そして、素敵な音楽や絵画に触れ、優れた文学を読み、幅広い教養を身に付けてください。また、自分を多様な他者や世界と出会わせ、深くものを考える力や対話する力を身に付けてください。そうして、自らが思い描く社会の実現に向け、他者から信頼され尊敬される「人格」となるよう努力を続けてください。高圧電線は、強い風や雪の重みに耐えられるように弛ませておき、決して一直線には張りません。二つの点の間の最短距離を直線で結ぼうとすると切れてしまいます。急ぐあまり、自分の「余白」をなくしてしまわないようにしてください。

 自立した一人一人が意見の違いを認め合い、健全な合意を創り上げる営為が、私たちの世界を分厚く豊かなものにします。これからの世界をつくるのは皆さん自身です。大学でも、そして社会に出ても、大いに学び、自分の世界を広げ、温かい心を持った素敵な大人になってください。

 終わりになりましたが、保護者の皆様方に改めてお礼とお祝いを申し上げます。今年度、本校は創立百二十周年を迎えましたが、これもひとえに保護者の皆様方の御理解と御協力があってのことと感謝申し上げます。本当にありがとうございました。
 また、今日の晴れの日を迎えたお子様の健やかな成長ぶりを目の当たりにされ、入学から今日まで温かく見守り、励ましてこられた日々が思い出され、感無量のものがおありのことと拝察いたします。皆様方のこれまでの御労苦に対し、心から敬意を表しますとともに、本校にお寄せいただきました数々の御支援、御協力に厚くお礼申し上げます。
 卒業生の皆さんとの名残は尽きませんが、本校を巣立っていく二百七十名一人一人の輝ける未来への航路を期待し、式辞といたします。

令和二年三月二日    
岡山県立岡山操山高等学校
校 長  近 藤   治