生物の実習

「生物の実習」にそった実験を紹介
  

実習22 光合成色素の分離



目標

緑葉中の色素をペーパークロマトグラフィーにより分離する。

準備

  • [材料]  ホウレンソウ・シロツメクサなどの葉肉の柔らかい緑葉(抹茶粉末を抽出溶剤に溶かして使用してもよい)
  • [器具]  大型試験管(直径3㎝)・試験管立て・ゴム栓・ビーカー(100mL)・ガーゼ・鉛筆・乳鉢・ハサミ・ペーパークロマト用ろ紙(東洋№50,№51B)・ガラス毛細管(内径0.3㎜)
  • [薬品]  抽出溶剤:ジエチルエーテル   展開液:トルエン 

方法

  1. ろ紙をゴム栓の下部中央に作った切れ込みにはさみ,ろ紙の下端が大型試験管の下端から約1.5㎝なるようにろ紙の長さを調節する。 
  2. 材料の葉を,はさみで細かくきざみ,乳鉢でのり状になるまでつぶす。 
  3. のり状になった葉が浸るぐらいに抽出溶剤を加え,さらにつぶしながら色素を抽出する。抽出溶剤は蒸発しやすいので換気を必ず行う。
  4. ③の抽出された色素をガーゼで100mL用ビーカーにこしとる。(こしとらず,そのまま上澄みを用いてもよい。)    
  5. ろ紙の下端から約2㎝のところに鉛筆で線を引き,中央を原点とする。ガラス毛細管を用いて,抽出液を図1のように原点にしみこませる。乾燥させながらこれを数回繰りかえす。抽出液をしみこませる部分はなるべく小さい円(直径5㎜まで)になるようにする。

  6. 大型試験管に展開液を約10mL入れ,⑤のろ紙の下端が5㎜ほど展開液に浸るように,固く栓をして静かに試験管立てに置く。この時ろ紙が試験管壁に触れないように注意する。20~30分間静かに放置し,色素が分離する様子を観察する。

  7. 展開液がろ紙の上端近くに達したらろ紙を取り出し,展開液の達した線に鉛筆で印をつける。



材料にホーレンソウを用いる。 葉の柔らかい部分をよくすりつぶす。 抽出した色素

原点にスポットする。これはちょっと大きすぎるが,分離の結果にはあまり影響しないようです。 原点が液面より上に来る位置で試験管に静かに入れる。 展開液がゴム栓の1~2㎝下にくるまで,20~30分待つ。

結果

  1. ろ紙の分離した色素の区分に図3のように鉛筆で印をつけ,色素の色も記入する。(橙・黄・青緑・黄緑の色鉛筆で印をつけてもよい。)色素は時間とともに退色するので速やかに行う。
  2. ろ紙を右の余白に貼り付け,分離された色素の色をした表に記入する。
色素1 色素2 色素3 色素4 色素5
色素の色
色素名

下の値はホウレンソウと抹茶の実験結果です。
抽出溶剤:ジエチルエーテル 展開液:トルエン
実験日:2006年12月1日 気温:18℃
ホウレンソウの色素の色とRf値
色素1色素2色素3色素4色素5
色素の色薄黄鮮黄赤みのある黄鮮青緑黄緑
色素名βカロテンルテインビオラキサンチンクロロフィルaクロロフィルb
Rf値0.980.770.600.490.19

抹茶の色素の色とRf値
色素1色素2色素3色素4色素5
色素の色薄黄鮮青緑黄緑
色素名βカロテンルテインビオラキサンチンクロロフィルaクロロフィルb
Rf値0.980.820.830.430.26

考察
  1. 原点につけた色素はいくつに分離したか。   




  2. 色素はなぜ分離したのか,その理由を考えよ。


      
  3. 参考資料をもとに分離した色素名を考え,上表へ記入せよ。
    Rf値=原点から各色素の中心点までの距離(図3のb)/原点から展開液の達した線までの距離(図3のa)
                 (Rf値は温度・湿度等により変化する)



      
葉緑中の色素の色とRf値
色素名クロロフィルaクロロフィルbカロテンキサントフィル
色素の色青緑黄緑橙黄
Rf値10.790.630.990.95 0.88
Rf値20.340.210.990.83 0.62
Rf値1・・・ジエチルエーテル抽出
Rf値2・・・エタノール:アセトン=3:1抽出

ペーパークロマトグラフィーとは

微量物質の分離方法の一つで,ろ紙に少量の試料をつけ展開液をしみこませる。試料の種類により展開液への溶け方の違いと,ろ紙への吸着のしやすさが異なるため,ろ紙上を移動する速度が異なることを利用している。