生物の実習

「生物の実習」にそった実験を紹介
  

実習5 体細胞分裂



目標

植物の根端の体細胞分裂を観察する。

準備

  • [材料]  タマネギ・ニンニク・ソラマメなどの根端
  • [器具]  顕微鏡・検鏡用具・ガスバーナー(アルコールランプ)・マッチ・ビーカー(50mL,200mL)・安全がみそりの刃
  • [薬品]  酢酸オルセイン液(酢酸カーミン液)・約3%塩酸・酢酸アルコールまたはカルノア液    

方法

  1. タマネギやニンニクの発根部分を,水を満たした容器の上にのせておくと,4~5日程度で根が数㎝に伸長する。 
  2. 伸びた根を先端から1㎝くらいで切り取り,酢酸アルコールに入れて固定する。【固定】 
  3. 50mLのビーカーに塩酸を入れ,これに固定した根端を浸し,200mLビーカーの中で60℃で数分間湯煎する。【解離】
  4. 根端を取り出し,水で塩酸を洗い流したのち,スライドガラスにのせ,安全がみそりの刃で根端部を5㎜程度残すように切り,余分な部分を取り除く。酢酸オルセイン液を1滴落とし,5~7分間放置したのち,カバーガラスをかける。【染色】    
  5. ろ紙で余分な染色液を吸い取り,マッチの軸などを使い細胞がばらばらになって一層に広がるように押しつぶす。【押しつぶし】
  6. うすく赤く染まって見える部分を検鏡する。まず低倍率で検鏡し,分裂期の細胞をさがす。次に,高倍率に変えて,それが細胞分裂のどの時期のものか確認し,スケッチする。
  7. 展開液がろ紙の上端近くに達したらろ紙を取り出し,展開液の達した線に鉛筆で印をつける。



根の先を2㎝くらいの長さに切る。午前10時から11時頃に切り取ると分裂中の細胞が多く見られるようです。この状態で保存しておきます。この操作を「固定」といいます。固定することで細胞分裂のそれぞれの分裂期(間期(母細胞)・前期・中期・後期・終期・間期(娘細胞))に留まり,細胞が仮死状態になります。【固定】 操山ではソラマメを使って実験します。

固定した後,5%塩酸を入れたビーカーにタマネギの根の端を入れ,湯煎(60℃)にします。こうするとタマネギの細胞は高温によって完全に死に,細胞壁が塩酸によってばらばらに崩されていきます。【解離】


乖離後,根を水洗いして先端を5mmほど残して切り取り,酢酸カーミンで4~5分程度染色する。【染色】
根端組織をカバーガラスの上からたたいて細胞を分散させます。右の図の状態くらいまで分散させると観察がしやすくなります。【押しつぶし】

下の画像は、ニンニクの根(2n=16)を使っています。
まず低倍率で観察をします。分裂が多く見られる箇所を中央にしてから高倍率で観察する。


前期:中央部
染色体が太く短くなり,縦裂が始まる。

前期:中央上部

後期:右中央部

前期:右中央部

中期:左下部
染色体が細胞中央の赤道面に並んでいる。

後期:中央上部
紡錘糸によって染色体が縦列面で二分され両極に移動している状態。

後期:中央下部

終期:中央上部
両極に移動した染色体は,再び糸状に戻る。内側から細胞板が形成され細胞質分裂がおきる。

間期:終期下
2個の娘細胞はそれぞれ同じDNAをもつ。

終期:右中央部分

結果

  1. 分裂各期の特徴のよくあられた細胞をそれぞれスケッチせよ(上画像参照)。
    各時期の細胞の特徴
     間期:核に中に核小体が白っぽく見える。
     前期:染色体が凝縮して太い紐状になる。
     中期:染色体が赤道面に並ぶ。
     後期:染色体が両極へ移動。
     終期:染色体が分散して娘核ができる

考察
  1. 体細胞分裂の観察材料として,植物の根の先端を選んだのはなぜか。   




  2. 根端を塩酸に入れて,数分間湯煎したのはなぜか。




  3. 酢酸オルセイン液で染まったのは,細胞のその部分か。酢酸オルセイン液で染まったのは,細胞のその部分か。



  4. 体細胞の染色体数を数えるには,分裂期のどの時期の細胞を観察すればよいか。また,それはなぜか。