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STORY 06
この重さ、嫌いじゃない

 

ある日の操山バッグ

望月椛

私が操山に入学して一番驚いたのは必要物品の重さだった。物品購入の時点で「これを毎日持っていくのか……」と思っていたら、事態はさらにその上を行っていた。

毎日のようにワーク、ファイルの類が学校から追加されるが、それにしても重すぎる。最近はやけに操山バッグが肩に食い込むようになっていたのだ。物の入れすぎかな? という自覚はあるものの、時間がなくて片づけも出来ていない。

 

「荷物の詰め過ぎじゃないの?」

登校してきたばかりの級友に相談すると、第一声がそれだった。やっぱり彼女の目から見てもそうらしい。

「ですよねー」

「勉強道具以外に何が入ったらそうなるの? ちょっと中見るよ」

「どうぞどうぞ」

バッグの中身を見終わったらしいが、しばらく沈黙が続く。そして級友は呆れ顔で口を開いた。

「……というか、今はどれだけ課外活動しているの? カバンから大量の道具、資料、その他もろもろごっそり出てきたけれど」

「文化部二つ入って、学校祭の実行委員をして、他に委員会入って、地域でボランティアやりたくなったから資料だけ取り寄せたところだよ」

「はあ! ホントよくそれで生きているね。課題とかは?」

「ギリギリ。帰宅時間がどうしても遅いからね」

「じゃないと異常だって。でもこれではっきりしたじゃない、カバンが重い理由が。嫌なら片付けなよ」

結局、その後は他愛ない話をしただけで終わった。

 

放課後、他にも何人かに話を聞いたけれど、全員口を揃えて「片付けなよ!」だった。普通はそうだよな、と思いつつ操山バッグを開ける。

「さて、片付けますか」

 

操山バッグを片付けた翌日の朝、教室の前で級友に早速そのことを気付かれた。

「おー、なんか荷物すっきりした?」

「持ってみなよ」

「……」

若干既視感を覚える沈黙が続く。まあ、呆れるのも仕方ないかな。何せかさばるけれど軽いタオルくらいしか抜いていないのだ。要は、重さは昨日のままということ。

 

結局、私は委員会や部活の資料を片付けなかった。軽くするのなら、使う機会の少ないこれらを抜くのが最も手っ取り早いとは分かっていた。けれど、「嫌なら片付けなよ」という級友の言葉がどうも引っ掛かったのだ。

学校生活が充実しているので重くなった、真新しい校章が光るバッグ。はたして自分はこの重さが嫌なのかどうか。相当長い間悩んで、そして結果はこの通り。

だって操山バッグが重いのは、今の生活を楽しんで、努力した証だから。私にはやりたい事が沢山あるから。みんなは「片付けなよ」と言うけれど、私は、

 

この重さ、嫌いじゃない。

 

 

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