岡山県立岡山操山高等学校

岡山操山中学校 通信制課程
〒703-8573
岡山県岡山市中区浜412番地
086-272-1241
086-272-1721
〒703-8573
岡山県岡山市中区浜412番地
文字サイズ

平成30年度 3学期始業式 校長式辞

2019年01月08日

皆さん、明けましておめでとうございます。
新年早々、中学校・高校の生徒の皆さんの元気な顔を見ることができて、とても嬉しいです。


高校3年生の皆さんは、約10日後にセンター試験を迎えます。前日18日(金曜日)の学年集会のときに、ビデオレターの形で、改めてエールを送らせていただきたいと思います。
中学生の皆さんや高校1・2年生の皆さんにとっても、3学期は1年間の活動の総仕上げの時期です。全力で頑張ってください。
さて、中・高それぞれ3学年そろっての式は今日が最後なので、私の心に残っている2つの言葉を皆さんにお伝えし、式辞としたいと思います。
1つ目は、私が大好きな映画の主人公のセリフです。その映画とは「男はつらいよ」。私が小学生のとき、昭和44年に第1作が公開されて以降、主役の渥美清さんが亡くなるまで、26年間で全48作品が公開されました。
たくさん好きなセリフがありますが、昭和62年12月に公開された第39作でのセリフが一番印象に残っています。
異母兄妹の妹・さくらの息子で、思春期まっただ中、勉強や恋愛のことで悩んでいる光男(たしか中学生か高校生になっていたと思います)が、映画の終盤、いつものように失恋して再び旅に出ようとする伯父の寅さんに突然こう話しかけます。
「伯父さん、人間ってさ、人間は何のために生きてんのかな?」
すると、寅さんは困った顔をしてこう答えます。
「うんな~難しいこと聞くなあ・・・何というかなあ、ほら、
ああ、生まれてきてよかったな、って思う事が、何べんかあるじゃない。ね。そのために、人間、生きてんじゃねえか。
そのうちお前にもそういう時が来るよ。な。まあ、がんばれ」

中・高生のときは、自意識が強くなり、すぐに心にトゲが刺さったり、道に迷ったり、自己嫌悪に陥ったり、孤独を感じたりします。私たち大人は、皆さんの心の中の嵐を全ては理解できていないと思います。でも、私たちも若かったあの頃、出口の見えない暗闇をトボトボと歩いた経験をみんな持っています。
だから、皆さんに、この寅さんの言葉を伝えたいと思います。
今はつらくても、生まれてきてよかったなって思う事が必ずあります。がんばりましょう。

2つ目は、イギリスの経済学者ジョン・メイナード・ケインズの先生で、近代経済学の祖と言われるアルフレッド・マーシャルの言葉
Cool Head,but Warm Heart.(冷静な頭脳を持つ一方で、暖かい心を持とう。)
マーシャルは、ロンドンの貧民街にケンブリッジ大学の学生たちを連れて行き、こう言ったそうです。
「経済学を学ぶには、理論的に物事を解明する冷静な頭脳を必要とする一方、階級社会の底辺に位置する人々の生活を何とかしたいという温かい心が必要だ。」
また、43歳でケンブリッジ大学の政治経済学の教授に就任する際の演説でこのように述べました。「冷静な頭脳と温かい心を持ち、すすんで社会的課題に立ち向かい、力の限り努力を惜しまない経済学徒を一人でも多く育てるよう最善を尽くしたい。」
クール・ヘッドは、大学で学問をするにしても、大学院に進んで研究者を志すにしても、社会人として仕事を続けるにしても、絶対に必要です。エビデンス・ベースで、科学的、論理的かつ実証的に学び続けなければいけません。
一方で、ウォーム・ハートがなければ、研究のための研究、仕事のための仕事で終わってしまいます。社会的弱者や、病気や貧困などで苦しんでいる人、社会構造のはらむ矛盾、対立などを常に意識しながら、自分の研究や仕事をその解決に最大限生かそうと努力する姿勢や情熱こそが、真に尊敬されるべきだと、私は思います。
弱き人のために、操山生の皆さんのクール・ヘッドをこれからも生かしてください。決して上からではなく、相手と同じ目線で、手を差し伸べられる人になってほしいと思います。
では、3学期も頑張りましょう。以上で、式辞を終わります。