令和元年度 3学期始業式 校長式辞
皆さん、明けましておめでとうございます。
2020年、令和2年のスタートに当たり、生徒の皆さんの元気な顔を見ることができて、とても嬉しいです。
高校3年生の皆さんは、約10日後にセンター試験を迎えます。前日17日(金曜日)に、ビデオで、改めてエールを送らせていただきたいと思います。
中学生の皆さんや高校1・2年生の皆さんにとっても、3学期は1年間の活動の総仕上げの時期であり、次の学年への助走の時期です。緊張感を持って毎日を過ごしてほしいと思います。
さて、今日は1つだけお話をします。今年、オリンピックが56年ぶりに東京で開催されますが、その目指すものについてです。東京大会の「大会ビジョン」は、「スポーツには、世界と未来を変える力がある」というもので、「全ての人が自己ベストを目指し」「一人一人が互いを認め合い」「そして、未来につなげよう」が基本コンセプトです。その上で、「史上最もイノベーティブ(革新的)で、世界にポジティブ(前向き)な改革をもたらす大会とする。」ことを東京オリンピック・パラリンピックは目指しています。
「多様性と調和」、「未来への継承」がキーワードになっていますが、このビジョンのベースにあるのが、2015年の国連サミットで採択された「持続可能な開発目標(SDGs)」という考え方です。SDGsには、「貧困をなくそう」や「質の高い教育をみんなに」、「気候変動に具体的な対策を」など17の目標がありますが、IOC(国際オリンピック委員会)は、東京大会での「全ての側面に持続可能性を導入する」とし、環境や人権などに配慮する方針を示しています。
例えば、昨年11月末に完成した「杜のスタジアム」と呼ばれる新国立競技場は、国産の木材がふんだんに使われ、「環境に配慮したオリンピック」の象徴となっています。
しかし一方で、国立競技場をはじめ9つに競技場で、コンクリートを流し込む基礎工事で必要な型枠合板に使い捨ての木材が大量に使われ、その3分の2以上がインドネシアとマレーシアの熱帯材だという事実もあります。これらの国々では貴重な生態系を維持するために大切な熱帯林が切られているのです。
物事は、必ずプラスの面とマイナスの面が背中合わせになっています。経済(エコノミー)が成長するためには、天然資源を切り崩すことが必要です。その結果、地球の生態系(エコロジー)が破壊され、そこに住む人々の生活や動植物の生存・生物多様性が脅かされます。経済のグローバル化が進んだ現在では、他国の犠牲の上に一時的な繁栄を得ることができても、必ず、地球規模の気候変動や地域紛争、難民の発生などの形で大きな影響を受けるでしょう。
エコノミーとエコロジーを例に取りましたが、是非操山生の皆さんには、各教科・科目で学んだ教科横断的な知見を総合的に活用しながら、広い視野と複眼的な視点、さらに明確なエビデンス(科学的根拠)を持って、様々な社会事象を冷静に分析する知性(インテリジェンス)と、ユーモアや優しさ、他者に寄り添う心など豊かな人間性(ヒューマニティ)を、この1年間の本校での活動を通してしっかりと身に付けてほしいと思います。この4月から高校1年生に導入する一人1台パソコンは、教室を世界の最前線とつなぐことで、授業が変わるだけでなく、皆さんの学び方がより主体的なものになるでしょう。
「自分だけが良ければいい」「今だけ良ければいい」「金だけあればいい」という近代の論理を乗り越え、新しい時代のパラダイム(思考の枠組み)を構築する先頭に立ってください。評論家が百人いても世界は変わりません。世界を変革する実践者が1人いれば、より良い社会の実現に向けたムーブメントを起こすことができます。今回のオリンピックが史上最もイノベーティブで、世界にポジティブな改革をもたらす大会となるかどうかは、皆さんをはじめ、これからの時代を担う世界中の若者にかかっています。
選手たちの活躍に心から拍手を送る、おもてなしの心で海外の方と交流することに加え、今、日本で、世界で何が起きているのか、どの情報が本当に正しいのか、そしてより良い社会の実現のために、自分は何を学ぶべきか、どう生きていくかを深く考え、実践する1年にしてもらいたいと思います。
高い志を持った社会のそして世界のリーダーとして、学校や国の枠を超えて、切磋琢磨して頑張りましょう。
以上で式辞を終わります。